映画監督から注意される!厳しい演技指導は俳優のため? 瞬きの回数までも?
緊張感で張り詰めている映画撮影の現場。監督は俳優に高い演技の要求をして、現場では怒号が飛び交うことも。
映画監督はどのような意図があって厳しい指示を出しているのでしょうか?
こちらの記事では、厳しい演技指導についての話や、実際の映画監督のエピソードなどをまとめています。
俳優を目指している方や、映画撮影の裏側に興味のある方は、ぜひご一読ください。
■監督が厳しいのは?
映画監督にもいろいろなタイプの監督がいます。
ときには俳優に難しい芝居を要求する監督。自分が納得できるまで何度も撮り直す監督。
すべては、監督のイメージするレベルの作品にするためなのです。
俳優に厳しく当たるのは、本気の演技を引き出すため。そして俳優の潜在能力に期待しているからなのです。
俳優を罵倒するように厳しくあたり、ギリギリまで追い込むことで、本来の人間性を引っ張り出し渾身の演技をカメラに収めます。
そういった作品は、俳優にとっても代表作になることも多く飛躍のきっかけとなるのです。
逆に全く俳優に指示を与えず、役者に考えさせるタイプの監督もいます。
腕を組んだまま演技指導もせずに、監督の納得がいくまで撮り直しを続けるのです。
監督から出る言葉は「もう一回」のみ。俳優は試行錯誤を繰り返して演技の「答え」をさがします。
こうして何テイクと撮りなおしたシーンは、珠玉の名場面になることも。
俳優にとって厳しい監督との出会いは、苦難の連続ではありますが自分を成長させる絶好の機会となるのです。
■厳しい映画監督のエピソード
日本映画の監督の中でも、特に厳しいといわれる監督を紹介します。これらの監督は、人間の狂気や深層心理などを生々しく描いている作品が多いのも特徴です。
李相日監督
69 sixty nine
フラガール
悪人
許されざる者
怒り
ブルーハーツが聴こえる
などで知られる李相日監督。スパルタのような厳しい演技指導で有名です。
「悪人」ではベテラン俳優の柄本明さんに対しても、遠慮なく厳しい演技の注文。柄本さんも腹を立ててしまい、口を利かなくなってしまったそうです。
「許されざる者」では実力派の柳楽優弥さんも苦しみました。20回を越えるNGを出され、しかもノーアドバイス。何も指示を出さないので答えを見つけるしかありません。
かなり大変だったようですが、OKが出るたびに自信を取り戻し、初めて一発OKが出たときは、人目をはばからず泣いてしまったそうです。
「怒り」に出演した広瀬すずさん。なんとオーディションを受けて役を勝ち取りました。人気絶頂の広瀬さんでも、李監督は容赦ありません。
広瀬さんは厳しい指導を受けて、リハーサルを何度も繰り返していくうちに混乱してしまったそうです。
そこで李監督から「バカヤローと叫んでもいいよ」と言われ、実際に叫んだことで気持ちを切り替えることができたのです。
広瀬さんは監督が弁当を食べるところを見て「監督も人間なんだ」と思ったそうです。言い換えれば、人間離れした面があったというところでしょうか?
この作品で共演した宮崎あおいさんは「李監督はとても厳しい方でしたが、そこにはちゃんと愛情があることも伝わりました」と語っており、厳しいばかりの監督ではなかったのですね。
園子温監督
自殺サークル
夢の中へ
冷たい熱帯魚
ヒミズ
希望の国
新宿スワン
ラブ&ピース
など独自の世界観で国内外を問わずファンが多い園子温監督。「鬼才」と呼ばれるだけあって撮影現場も独特の雰囲気なのです。
「役者に嫌われても構わない」「厳しく接するのが役者への愛だ」と豪語するだけあって、演技指導もとても厳しいようです。
「地獄のようだ」といわれるほどの厳しさで泣いてしまう俳優も。青アザができたり、鼻血が出たりするほどの激しい現場。生々しい作風も頷けます。
園子温監督によって見出された俳優も多く。満島ひかりさん、二階堂ふみさん、吉高由里子さんなど、監督の厳しさで育てられたことでも有名です。
中島哲也監督
嫌われ松子の一生
パコと魔法の絵本
ララピポ
告白
渇き
来る
など個性的な演出や世界観で、見るものを魅了し続ける中島哲也監督。
俳優に対して厳しい演技指導を行い、新しい一面を引き出すことで知られています。
「嫌われ松子の一生」に主演した中谷美紀さん。
監督からの要求が高く、とことん追い詰められていくうちに「殺意を抱くようになった」と後にコメントするほどです。
苦労のかいがあって、この映画で中谷さんは国内の主演女優賞を総なめにしました。
■瞬きの回数まで指導する監督も
監督の演技指導は瞬きの回数まで及ぶこともあります。映像作品でアップのシーンになると瞬きの回数やタイミングは大きな意味があるのです。
瞬き一つでたくさんの感情があります。緊張や動揺、焦りなどを表現。俳優が緊張して瞬きが多くなってしまうと作品が台無しになってしまいます。
瞬き以外にも、目線の送り方や、口の動きなどの細かい動作まで演出されるのです。
■同じ俳優を何度も使い続ける監督
自分の作品に、何度も同じ俳優を使い続ける監督もめずらしくありません。
ドラマや映画で人気の福田雄一監督も、お気に入りの役者をよく起用しています。
ムロツヨシさん、佐藤二郎さん、山田孝之さん、賀来賢人さん、橋本環奈さんなど
いわゆる「福田組」と呼ばれるメンバーですね。福田作品で名を上げて、今や映画やドラマ、CMなどに引っ張りだこの面々です。
個性的な役者ばかりで、福田監督の期待に応える芝居やアドリブもこなし、独特の作品が作られています。
■監督が求める俳優とは?
監督が理想とする「使いたくなる俳優」とは、どのような俳優なのでしょうか
脚本の読解力がある
俳優はセリフを覚えるだけではなく、脚本の内容を理解することが大切です。
脚本を読み違えて演技をすると、監督の世界観から大きくかけ離れてしまいます。
読解力を身に付けるには、量をこなすことが最も有効。脚本以外にも読書や映画などにたくさん触れることで、疑似体験を通じ脚本が理解できるようになります。
キャラクターの人物像をイメージできる
作品の内容を理解することで、演じる役柄がどういった人物なのか考察して、表現できるようになります。
最初に脚本の内容、登場人物の設定などを考えて具体的な人物像をイメージ。
自分の考えた人物像をもとに、リハーサルを重ねて演技が定まり役作りができるのです。
それでも監督の求めている芝居と違っていた場合もあります。そのときは監督の要望に答えられる対応力の高さが求められます。
監督の意図に合った、表現や演技ができるようになるとスムーズに撮影が進みます。
印象に残る俳優
技術力があり自分だけの武器を持っている俳優や、人を惹きつける芝居ができる俳優は印象に残ります。
他にも堂々と自信を持って芝居をしていたり、俳優としての引き出しが多かったりすると、演技の幅が広がり、監督から重宝されるのです。
■まとめ
厳しい監督の撮影現場はピリピリした雰囲気で、緊張感があります。
俳優は、その中で研ぎ澄まされることにより渾身の演技ができるようになるのです。
監督の期待に応えることで、評価が上がり役者として格段に成長。
今後は様々な作品に、キャスティングされることが期待できるでしょう。